白夜行:日文版-第71部分
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「育ちの悪さが滲み出ている?」今枝はにやにやしてみせた。
「そこまではいいません。単に上品なだけではないもの、隙のなさのようなものを感じることがあるんです。今枝さんは猫を飼ったことがありますか」
いえ、と今枝は首を振った。
「僕は子供の頃、猫を何匹か飼ったことがあるんです。血統書付きではなく、すべて拾った猫でした。ところが同じように接しているつもりでも、拾った時期によって猫の人間に対する態度は大きく摺盲皮毪螭扦埂3啶蠓护螘rに拾った猫というのは、物心ついた時からずっと家の中にいて人間の庇護の下で暮らしているわけだから、人間に対して警戒心をあまり持っておらず、無邪気で甘えん坊です。ところがある程度大きくなってから拾った猫というのは、なついているようでいても、じつは警戒心を百パ互螗冉猡い皮悉い胜い螭扦埂pD《えさ》をくれるからとりあえず一緒に暮らしてはいるが、決して油断をしてはならない――そんなふうに自分にいいきかせているようなふしがあります」
「唐沢雪罚Г丹螭摔稀ⅳ饯欷韧鸽儑鞖荬ⅳ毪龋俊
「自分が野良猫にたとえられたと知ったら、彼女はそれこそ猫のように怒るでしょうが」篠塚は口元を尽钉郅长怼筏肖护俊
「でも」今枝は唐沢雪罚Г蚊à蜻B想させる鋭い目を思いだしながらいった。「その特性が逆に魅力になっている場合もある」
「おっしゃるとおりです。だから女は恐ろしい」
「同感です」今枝はグラスの水を一口飲んだ。「ところで、株取引に関する報告文はお読みになりましたか」
「ざっと目を通しました。よく証券会社の担当がわかりましたね」
「高宮さんのところに少し資料が残っていたんです。そこから突き止めました」
「高宮のところに」篠塚は顔をかすかに曇らせた。様々な懸念が脳裏をよぎっている表情だ。「今回の眨麞摔摔膜い票摔摔悉嗓韦瑜Δ苏h明を?」
「ざっくばらんに事情を話しました。唐沢雪罚Г丹螭趣谓Y婚を望んでいる男性の家族から依頼されて眨麞摔筏皮い毪韦坤趣汀¥い堡蓼护螭扦筏郡
「いや、それでいいです。もし結婚ということになれば、いずれわかることですから。彼はどんな様子でした?」
「彼女にいい相手が見つかったのならよかったとおっしゃっていました」
「僕の身内だとは話さなかったのですね」
「話しませんでしたが、あなたからの依頼ではないかと薄々感づいてはおられるようでした。当然でしょうね。全くの他人が、多少なりとも高宮さんと面識のある私のところに、たまたま唐沢雪罚Г丹螭握{査を依頼してきたなんてのは、話ができすぎている」
「そうですね。じゃあ機会を見て、僕のほうから高宮に話したほうがいいかもしれない」篠塚は独り言のようにいってから再びファイルに目を落とした。「この報告書によると、彼女は株でかなり稼いだようですね」
「ええ。残念ながら彼女の担当だった女性はこの春に寿退社をしていたので、その人の記憶に頼るしかなかったのですが」
もっとも退社していなければ顧客の秘密を他人に話すようなことはしないだろうがと今枝は思った。
「去年あたりまでは素人投資家でも結構儲けていたと聞いていますが……リカルドの株に二千万もつぎ込んだってのは本当なんですか」
「本当らしいです。担当の女性も強く印象に残っているといっていました」
株式会社リカルドは元来半導体メ‘である。そのリカルドがフロンの代替物伲蜷_発したと発表したのは約二年前だ。一九八七年九月に国連でフロンガス規制が採択されて以来、国内外で繰り広げられている開発競争で、リカルドがついに頭ひとつ抜け出したわけだ。一九八九年五月には、今世紀中にフロン全廃をうたったヘルシンキ宣言が採択され、以後リカルドの株は伸び続けた。
担当者が驚くのは、唐沢雪罚Г辘蛸Iった時点では、リカルドの開発状況は全く公開されていなかったということである。それどころかリカルドがそういう研究をしていることさえ、業界でも殆ど知られていなかった。国内有数のフロンメ‘であるパシフィック硝子で長年フロンガス開発に携わってきた技術者数名が引き抜かれていたと判明するのは、代替物伲_発に関する記者会見が終わってからのことだった。
「同様のケ工郅摔猡い恧い恧ⅳ毪瑜Δ扦埂¥嗓ΔいΩ鶔嚖嘶扭い皮い毪韦喜幻鳏坤⑻茮g雪罚Г丹螭辘蛸Iった会社は、しばらくすると必ずといっていいほどヒットを飛ばす。その確率は殆ど百パ互螗趣坤盲郡鹊5闭撙悉い盲皮い蓼埂
「インサイダ俊购S塚は声を落としていった。
「――を担当者も疑っていたようです。唐沢さんの旦那さんはどこかのメ‘勤務らしいが、特殊なル趣撬绀伍_発状況を知ることができるのだろうか、とね。もちろん唐沢さん本人に訊くようなことはしなかったそうですが」
「高宮の部署はたしか……」
「枺麟娮爸晔交嵘绀翁卦Sライセンス部。たしかに他企業の技術に通暁する環境ではありますが、あくまでも公開された技術に関してだけです。未公開の、しかも開発途中にある技術の情報など得られるはずがない」
「すると単に株式に関して勘がいいということなのかな」
「勘もいいようです。その担当者の話では、株を手放すタイミングも絶妙だったということですから。まだ少し上がりそうな気配を残している段階で、すぱっと次に切り替えてしまう。それが素人投資家にはなかなかできないのだといってました。でもね、やはり勘だけでは株はやっていけませんよ」
「彼女の背後に何かある……ということなのかな」
「わかりません。しかしそんな気はします」今枝は肩をちょっとすくめて見せた。「これこそ勘にすぎないといわれそうですが」
篠塚はもう一度ファイルに目を走らせた。首をわずかに傾げる。
「ほかに気になることが一つあるんですが」
「何ですか」
「この報告書によると、彼女は昨年あたりまで結構頻繁に株の売り買いをしていたようですね。現在も手を引いたわけではなさそうだ」
「ええ。たぶん店のほうが忙しいからでしょうが、今では一時ほど力を入れてはいないらしいです。しかし手堅い株をいくつかは持っているようです」
篠塚は、また首を小さく捻った。「変だな」
「どうかしましたか。何か報告に落ち度がありましたか」
「いや、そうじゃないんです。高宮から聞いた話と少し摺Δ胜ⅳ人激い蓼筏啤
「高宮さんから?」
「彼等がまだ結婚していた頃、雪罚Г丹螭辘耸证虺訾筏郡趣いυ挙现盲皮い蓼埂¥筏芳沂陇恧饯摔胜毪趣い碛嗓恰⒈伺苑证我馑激扦工伽茐婴陹Bったと聞いているんです」
「売り払った? すべて? それは高宮さんが確認されたんでしょうか」
「さあ、そこまでは知りません。確認はしていないんじゃないかな」
「私が担当者から聞いたかぎりでは、唐沢雪罚Г丹螭辘槭证蛞い繒r期はなかったようです」
「どうやらそうらしいですね」篠塚は不快そうに唇を結んだ。
「このように、彼女の資金哂盲摔膜い皮弦粡臧盐栅工毪长趣扦蓼筏俊¥郡馈⒏涡膜室蓡枻喜肖盲郡蓼蓼胜螭扦埂
「元々の資金はどこから出たか……ですか」
「そのとおりです。具体的な資料がないので正確に遡《さかのぼ》るのは難しいのですが、担当者の記憶をもとに推測していきますと、彼女は最初からかなりまとまった額の資金を持っていたことになります。それは主婦の小遣い程度の額ではありません」
「数百万レベルということですか」
「たぶんそれ以上でしょう」
篠塚は腕を組み、低く唸った。「高宮も、彼女の財布の中身については見当がつかないといったことがあります」
「以前あなたもおっしゃっていましたが、彼女の養母である唐沢礼子さんには大した資産はないようです。少なくとも、何百万もの金を用立てるのは簡単ではないでしょう」
「それをなんとか眨伽椁欷蓼护螭
「眨伽皮撙毪膜猡辘扦埂¥郡馈ⅳ猡ι伽窌r間をいただきたいのですが」
「わかりました。お任せします。このファイルはいただいても?」
「どうぞ。コピ鲜衷摔ⅳ辘蓼工椤
篠塚は薄いアタッシェケ工虺证盲皮い俊¥饯长衰榨ˉぅ毪颏筏蓼盲俊
「そうだ。これをお返ししておかなきゃいけなかった」今枝は自分の書類鞄から紙の包みを取り出した。開くと腕時計が入っている。それをテ芝毪酥盲い俊!赶热栅瑜辘筏繒r計です。服のほうは宅配便で送りましたから明日にでも届くと思います」
「時計も一緒に送ってくださってよかったんですよ」
「そういうわけにはいきません。事故があった場合、弁償してもらえませんから。カルティエの限定品だそうですね」
「そうだったかな。貰い物なんですが」腕時計の文字盤をちらりと見てから篠塚は上着の内ポケットにしまった。
「彼女がそういったんですよ。唐沢雪罚Г丹螭
「へえ」篠塚は一瞬視線を宙にさまよわせてからいった。「まあ、ああいう仕事をしているぐらいですから、そういったことにも詳しいんでしょう」
「それだけではないと思いますが」今枝はわざと意味深長な言い方をした。
「どういう意味です」
今枝は尻の位置を少し前にずらし、テ芝毪紊悉侵袱蚪Mんだ。
「唐沢雪罚Г丹螭悉ⅳ胜郡螐拘证丹螭违抓恁荸‘ズに対して、なかなか色好い返事をしてくれないということでしたね」
「ええ。それが何か」
「その理由について、一つ思いついたことがあるんです」
「何ですか。是非聞きたいですね」
「彼女には」今枝は篠塚の目を見つめていった。「ほかに好きな男性がいるのではないかと思うんです」
篠塚の顔から、すっと笑みが消えた。代わりに冷静な学者のような表情が表れた。何度か頷き、口を開いた。
「それは僕も考えないではありませんでした。単なる思いつきではありますがね。でもあなたがそんなことをおっしゃるところをみると、その相手の男性にも心当たりがあるということなんでしょうか」
「ええ」今枝は頷いた。「あります」
「誰です? 僕の知っている人間ですか。いや、もし差し障りがあるということでしたら、おっしゃらなくて結構ですが」
「差し障りはないと思います。まあ、あなた次第ですが」今枝はグラスの水を飲み、真っ直ぐに篠塚を見ていった。「あなたです」
「えっ?」
「彼女が本当に好きなのはあなたの従兄さんではなく、あなたではないかと思うんです」
奇妙なことでも聞かされたように篠塚は眉を寄せた。それから肩をぴくりと上げ、薄く笑った。軽く首も振る。「冗談はやめてください」
「私だってあなたほどではないが、それなりに忙しいんです。つまらない冗談で時間を無駄にしようとは思いません」
今枝の口眨恰⒑S塚も表情を引き締めた。彼にしても本当のところは、探偵がいきなり気の利かない冗談をいったとは思っていなかったはずだ。あまりにも突飛すぎて、どう対応していいかわからなかったのだろう。
「なぜそんなふうに思うんですか?」篠塚は訊いた。
「直感だといったら笑いますか」
「笑ったりはしませんが、信用もしません。ただ聞き流すだけです」
「そうでしょうね」
「直感でおっしゃってるんですか」
「いや、根拠はあります。一つにはその時計です。唐沢雪罚Г丹螭厦鳏椁摔饯欷纬证林鳏蛞櫎à皮い蓼筏俊¥ⅳ胜郡斡洃洡摔獠肖椁胜い瑜Δ胜搐踏に查gちらりと見ただけで、今まで忘れずにいたのです。それはその持ち主に対して特別な感情